はじめに
公益財団法人日本伝統文化振興財団は、ビクターエンタテインメント株式会社を基金元として1993年に設立されました。
当初より取り組んで参りましたわが国の伝統文化・芸能の調査・記録・保存・公開事業に加え、SPレコード音源アーカイブ設立と教育・芸術ジャンルへのレコード会社の枠組みを超えた取組みを機に、2005年に名称を「ビクター伝統文化振興財団」から「日本伝統文化振興財団」へと変更。2011年に内閣府による公益法人認定を受け今日に至ります。
伝統を未来に…
わが国には諸外国に類を見ない古の時代から続く伝統文化・芸能があり、それらを支える重要無形文化財保持者(人間国宝)をはじめ、地域文化の継承者や多くの優れた個人・団体が活躍しています。しかしながら、これらわが国独自の文化は一般の人々が直接鑑賞・体験する機会が減少するとともに、たゆまぬ努力と研鑽によって技芸を継承してきた実演家の方々の高齢化も著しく、技能レベルの維持と後継の対策が緊急かつ重要な課題となっています。
一方、19世紀後半に発明された音の記録・再生メディアである<レコード>は録音・複製技術の進歩を経て音楽文化の発展の一翼を担ってきましたが、パッケージ・ソフトから配信(デジタルデータ)へとメディアの転換が急速に進む今日、これまでに蓄積された文化遺産とも言うべき膨大な記録のうち時代を経たものやジャンルによっては死蔵や散逸の恐れが出てきました。
こうした背景をふまえ、弊財団ではわが国の伝統文化・芸能の将来を見据え、メディア環境の変化に対応しながら無形文化財の調査・記録・保存と世界に向けた公開を行うほか、後継者の養成支援や国際交流など伝統を未来へ継承する事業活動を行ってまいります。
皆さまの暖かいご支援、ご協力を賜りますよう謹んでお願い申し上げます。
公益財団法人日本伝統文化振興財団 理事長 市橋 雄二