「人間国宝 女流義太夫 竹本駒之助の世界(11枚組)」が芸術祭優秀賞を受賞
2009年12月22日
平成21年度(第64回)文化庁芸術祭の受賞者が発表され、参加作品部門内のレコード部門で、弊財団の作品「人間国宝 女流義太夫 竹本駒之助の世界(11枚組)」が優秀賞を受賞いたしました。
本作は、女流義太夫(浄瑠璃)の人間国宝、竹本駒之助が、広いレパートリーのなかから10の場面を厳選し、2006年8月から2年間をかけて録音した、自身の芸の集大成ともいえるCD全集です。
義太夫節は江戸時代に人形浄瑠璃文楽や歌舞伎という演劇の場を中心に発展しました。しかし、女性はどちらに出ることも許されていませんでした。そこで、江戸中期に座敷で弾き語りをしたのが女流義太夫の始まりです。以来、一貫して、浄瑠璃と太棹三味線のみによる「素浄瑠璃」という形で芸が継承されましたが、文楽での人形のような視覚的要素が無いことで、女流義太夫ではかえって語りの表現の探究が独自の深化を遂げたという側面があります。
竹本駒之助は人形浄瑠璃の盛んな淡路島で生まれ、早くから義太夫節の才能を顕しました。後に人間国宝となる文楽の太夫、四世竹本越路大夫(1913-2002)に特別に入門を許されて厳しい稽古に耐え、「お前が男だったら……」と嘆かせるほどに認められ、その真髄を継承するに至りました。さらに女流義太夫ならではの語りに磨きをかけ、声量の豊かさ、すぐれた人間描写、芸の深さなど、男女を超えて現代の義太夫節の最高峰の一人と称されています。
本作は、近年円熟味を加えるとともにますますエネルギッシュな竹本駒之助の至芸を記録し、その魅力を広く伝えたいという意図で制作したものです。なかでもCD6からCD11まではライブ録音、および公開録音で収録されており、聴衆を前にした緊張感と臨場感のあふれる渾身の語りに接することができます。
女流義太夫での個人全集は本作が初となり、全段(各44分から95分)をすべて一人で語りきった、まさに義太夫アルバムの歴史的金字塔といえるものです。
また、本作の解説書は、B5変形判104頁という大部のものとなっています。収録作品全10段の詞章、あらすじ、解説、語注を掲載しておりますが、詞章は、トータルで9時間40分にも及ぶ竹本駒之助の語りを、できるだけ忠実に文字に起こすことを試みています。義太夫では情景も登場人物もすべて一人で語られていますが、セリフが誰のものであるかわかるように、今回は解説者独自の工夫によって、台本形式で表記しています。鑑賞の助けになるだけでなく、竹本駒之助が伝承する詞章の記録資料としても、たいへん価値が高いものとなっております。
平成21年度(第64回)文化庁芸術祭の決定について(文化庁)
(http://www.bunka.go.jp/geijutsu_bunka/geijutsusai/pdf/21_geijutsusai.pdf)※リンク切れ